「GI灘五郷」は2018年6月28日に国税庁長官の指定を受けました。
灘五郷で造られた日本酒を保護する地理的表示制度です。

灘五郷は、西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷の総称であり、北には六甲連峰を背負い、南には大阪湾を望む、東西に細長い帯状の地域です（以下、本生産基準における「灘五郷」とは、兵庫県神戸市灘区・東灘区、芦屋市、西宮市を指します）。

冬季になると、西からの季節風が明石海峡で収束し、山沿いを強く吹き抜け、六甲山の山頂に当たって「六甲おろし」となって山から吹き降ります。このような気候条件は、「寒造り」に非常に適した環境をもたらしています。

また、灘五郷の海辺に迫る山系の急斜面は、東西約10キロメートルの間に9本の急流を集めており、古くからこの水力を利用した水車精米が盛んに行われてきました。これにより、高品質な白米を多く得ることができました。さらに、沿岸部に位置することから船積みにも便利であり、このような地の利によって灘の酒造業は大きく発展してきました。

この地域で湧き出る地下水は、宮水に代表されるように、地域の地層を通ることで、酵母の増殖に必要なクロールやカリウムなどのミネラル分を適度に含みながらも、着色の原因となる鉄分をほとんど含んでいません。そのため、酒造りに非常に適した硬水となっており、これを仕込み水として使用することで、力強く健全な発酵が促され、味わいの要素が調和し、後味の切れが良い酒質が形成されてきました。

灘五郷の清酒は、総じて味わいのバランスが良く、後味の切れの良さを備えています。その中でも貯蔵された酒は、秋になると香味が整い、「秋上がり」によってまろやかさが増し、飲み飽きしない酒質となります。

また、純米吟醸酒や吟醸酒では、華やかな果実のような香りと幅のある味わいが調和し、より一層、後味の切れが際立つ酒質が実現されています。