「GI信濃大町」は2023年6月30日に国税庁長官の指定を受けました。
信濃大町地域(南に隣接する長野県北安曇郡松川村を含みます)は、長野県の北西部、本州の中央部に位置する松本盆地の北端にあります。この地域の西部一帯には、3,000メートル級の山々が連なる飛騨山脈(北アルプス)がそびえ、市街地の東側にも1,000メートル級の山々が広がる、山に囲まれた地域です。
この地域における酒造りおよび原料となる米の生産において最も重要な特徴は、北アルプスからの雪解け水を中心として、豊富な水量を確保できる点にあります。北アルプスからの雪解け水は、表流水として篭川・鹿島川水系に流れ込むとともに、伏流水として青木湖・中綱湖・木崎湖から湧出し、農具川水系に注いでいます。
こうした水は清冽ではあるものの水温が低いため、一般的には水稲の生育には適していないとされています。しかし、青木湖などの湧水は一度湖に留まることで太陽熱により温められ、農具川として流れ出す頃には水稲の生育に非常に適した温度となります。このような自然環境の恩恵により、信濃大町地域は弥生時代から米作に適した土地として栄えてきました。
信濃大町の清酒は、雑味が少なく濃厚な味わいと、きれいで穏やかな香りの調和を持ち合わせており、地理的表示「長野」(清酒)の特性を有しつつも、米由来の特徴的な香味が際立っているお酒です。
色調は、無色または淡いゴールドのような透明感のある色を基調としており、香りは黄色いリンゴ、バナナ、メロン、洋梨といった熟した黄色い果物を思わせる香りの中に、炊きたてのご飯、つきたての餅、上新粉のような米由来のふくよかな香りがしっかりと感じられます。
口に含んだ瞬間、米に由来する明瞭で濃厚なコクが広がり、その後にまろやかな旨味や甘みが感じられます。旨味・甘み・苦味のバランスが取れた余韻がじっくりと残るのも特徴です。また、アルコールの切れが良いだけでなく、コクを構成する苦味を持っていることから、苦味・酸味・旨味を持つ食材との相性が良く、食中酒としても非常に適しています。