普通は起こらない“不可能”なこと。でも、すべては可能です。
世界で日本酒を楽しむ人が増える中で、
いま海外の人々に伝えるべき、
日本酒造りの本質は何だとお考えでしょうか。
伝統的な造り方こそが最も重要だと思っています。良い酒を造るにはすべての工程に手を入れなければなりません。触って、感じて、その一部になる必要があるんです。常に酒のそばにいれば、コンピューターの画面を見ているだけよりも素早く判断ができます。
酒に注いだ愛情や魂は、味わいとして伝わります。人の手が入っている酒には、造り手の気持ちが宿る。日本酒には、魂が宿るんです。
モリスさんが手掛けるブランド「Hachidori Sake」は、どんな思いで造りましたか。
最初に「Hachidori Sake」を造り始めたとき、アメリカ市場、そしてアメリカの人々にとって親しみやすいものにしたいと考えていました。アメリカで日本酒は人気がありますが、同時に少し理解するのが難しい面もあります。だからこそ、発音しやすく覚えやすい名前にしたかった。「Hachidori(ハチドリ)」は言いやすいし、みんなハチドリが好きですから。
そして、そこには物語があります。ハチドリは昔から私の人生において特別な存在でした。ハチドリは空中で静止することができます。それは“不可能”だと考えられていることですが、もしハチドリが空中で静止できるのなら、何だって可能なはずです。それが、私の日本酒に込めた「何でも可能だ」という考え方なんです。外国人が日本で日本酒を造る。普通は起こらない“不可能”なことです。でも、すべては可能です。またアメリカでは、ハチドリは亡くなった家族が戻ってきた象徴だと考えられています。ハチドリを見ると、家族が訪れてくれているということです。
私にとって「Hachidori Sake」は、とても明るくフレッシュで、生き生きとしていて料理によく合う日本酒です。料理と一緒に楽しんでもらうために造っています。そして、とても親しみやすい。誰であっても、どんな好みの人であっても、簡単に楽しめる酒だと思っています。
アメリカ人に日本酒を紹介するのは
楽しいですか?
ええ、何度経験しても飽きません。「日本酒は好きじゃない」と言う人に良い酒を注ぐと、「えっ、こんなにおいしいとは思わなかった」と驚きます。それを聞くのが本当に好きなんです。
現在、私はナパバレーを拠点とするJohn Anthony Wine & Spiritsの創設者兼CEOジョン・アンソニー・トゥルチャード氏とともに、自身のブランド「Hachidori Sake」を手掛けています。アメリカでは最初、日本酒に悪いイメージが広がり、本当はエレガントなお酒だということを人々は知りませんでした。その認識を変えたいという思いが、最終的に彼と共同で立ち上げたこの「Hachidori Sake」のプロジェクトに繋がったのです。私たちはともに、エレガントでありながら、アメリカの飲み手にとって親しみやすい日本酒を造ることを目指しています。