造り手たちが語る
伝統的酒造り

インタビュー

造り手たちが語る伝統的酒造りインタビュー渡部七海
賞をいただくのはありがたいこと。
でも、それより誇らしいのは
一生懸命売ってくださる酒販店の方と、
「おいしい」と飲んでくださる
お客様がいること。
その信頼に応えるために
日々努力を積み重ねる。
失敗を恐れず新しいことに挑み続ける。
それが私の責任であり、
酒造りに対する覚悟です。
挑戦

新澤醸造店 杜氏

渡部七海

もともとは発酵食品に興味があって大学を選んだら、
日本酒造りの授業が面白くてお酒に興味が湧いたんです。

まず渡部さんが日本酒の世界に入った
きっかけを教えていただけますか。

どちらかというと、お醤油やお味噌、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品に興味があって大学を選んだら、日本酒の授業があってお酒に興味が湧いたという感じです。お米の種類からできあがるまでのお話がガッチリと授業になっていました。最初は単純に面白くて、興味が湧いたんです。

2年生の研究室選びで日本酒造りができるところを選んで、研究していくうちに面白いなと。そんな時、ご縁でこちらの新澤醸造店に先に就職していた先輩が研究室経由でアルバイトを募集してくれて、そこで初めて「飲み物」というか「お酒」を造っている会社というのを認識して、そのまま就職したという流れです。

今考えると、怖いことをしたなと思います。「この会社だったらお酒造りに携われそう」というだけで1社しか受けていないので、就活と言えないような就活でした。

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新澤社長から、渡部さんは天才的な
利き酒能力をお持ちだと伺いました。
ご自身は、そうした感覚のルーツは
どこにあると思いますか。

小さい頃から好き嫌いがすごく多くて。母方のおばあちゃんが、調味料やお料理にこだわって作ってくれるタイプだったんです。だから、いつも使っているお味噌と味が違うと「これ味が違うから飲まない」と母親をすごく困らせたり。父方の祖父母が農家なんですけれども、いつも送ってもらうお米じゃない時も「これいつもと違う」、買ってきたシャケも「いつものスーパーじゃない」と。そういう、うるさい子どもだったらしいです。普段と違う、私の知っているこの味とは違うなど、そういうことに気づくのは多いかなと思います。自由研究でいろいろなスーパーの玉子の食べ比べをしたりするのも好きでしたね。あと小さい頃は虫の観察も好きで、家にカマキリの卵を持ち込んで母親に怒られたり、機関車のおもちゃのスピードの違いを家中の電池を外して実験したりしていました(笑)。

その「観察する力」が、今の酒造り、
特に見えない微生物とのやり取りに
生きているように感じます。
渡部さんがこうじのことを
「この子」と呼ぶのがすごく面白く感じました。

そうですね、それぞれ個性があるので。同じ配合で、同じ菌を使って発酵させていても、冷蔵庫の中の置いている場所で冷気の当たり方が変わってきたり、櫂入れ(かいいれ)する人の癖でもろみの面や、発酵の感じが変わってくるんですね。例えばタンクの中を4分割して、それぞれ2回ずつ、合計8回混ぜましょうとした時でも、結局そのタンクの中でお米が寄ってしまっていたりすると、そちらの方の発酵が進んで温度が高くなったりするので、櫂入れする人がどれだけ気づいて行うかによって、そのタンクの発酵の経過も変わってきます。同じことをやっていても個性が出てくる生き物なので、そう感じるのだと思います。

話ができないものを相手にするので、
よりたくさんのことに気づいてあげないといけない。

言葉を持たない微生物が相手だからこそ、
毎日が本当に新鮮な日々ですね。

作業としてしまえば、作業になってしまうことだと思うんです。分析や温度を取るなど、毎日本当に同じことを繰り返す。でも、それを自分が見て気づいて楽しめるかが醍醐味ですね。

会話ができる人間ですら、相手の思っていることなんてわからないですよね。話ができないものを相手にするので、よりたくさんのことに気づいてあげないといけないですし、さらにそれをこうじや酵母に好きなようにさせるのではなく、「自分の思っている方向に行ってもらわなければならない」。だから、よりその変化や、いつもと違う違和感に気づかなければならないですね。微生物は目に見えないものですが、こうじ菌がちゃんとお米に入ってきて食べてみると甘かったり、心配していた酒母からぽこぽこっと湧いてきたり。ちゃんと発酵しているとわかった時の安心感は大きいです。

インタビュー渡部七海イメージ05
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