「こんなチャンスはないから、チャレンジしてみよう」
入社3年目で「杜氏」を打診された時のことを
教えていただけますか。
今後の条件などの面談を社長としていた時、全く前触れなく「じゃあ来年から杜氏で」と言われて。「えっ」という感じでした。嬉しいという気持ちは全くなかったと言うと語弊がありますが、びっくりしたのと、あとは自分が本当にできるのか、すごく怖かったです。社長からは「よろしくね」とそれだけで(笑)。
現場のメンバーに相談したら、「社長もそう言っているし、こんなチャンスはないから、やってみたら」と言ってくれて、チャレンジしてみようと思いました。
渡部さんから見て、社長はどんな方ですか。
やはり「挑戦すること」をすごく大事にしている人です。現状維持で失敗しないことよりも、チャレンジして失敗することをすごく大事にしていらっしゃるので、若手がやりやすい環境を作ってくれています。もちろん何かする前から失敗していいということはないですけど、若手が考えて全力でやったものに関しては、社長もその失敗に対して一緒に考えてくれたりしますし、やればやっただけちゃんと返してくれる社長だと感じています。ただ、「やらないこと」に関してはすごく厳しいので、ひどく怒られたりもするんですけど(笑)。
最初は本当に完全なる失敗が多かったですが、今は失敗したこともあれば学んだこともあって、一概に失敗だけとは思わなくなってきています。「結果としていい形にするための失敗」というように教えていただいたので、それで少し考え方が変わってきたのもあります。
私は「全体の調整役」みたいなものかなと。
渡部さんにとって、
「杜氏」とは一言で言うと何でしょうか。
教科書通りだと酒造りの責任者になりますが、私は「全体の調整役」みたいなものかなと。私自身はすごく仕事ができるとは全く思っていなくて、各工程のプロフェッショナルの方が私よりも知っていることが多いので、その蔵人たちときちんとコミュニケーションをとって、より良いものを造るためにみんなで考える環境や空気感を作るのが、私の仕事だと思います。
環境作りといえば、作業の効率化や省力化にも
気を配っていますね。
大変なことを「大変だね」で終わらせない方がいいという考え方で。例えば力仕事が大変だから男性がやった方がいいという考え方もありますけど、女性が大変なことは、男性もやはり大変なわけで。じゃあそれをより効率化、省力化することはみんなの作業効率に関わってくるから、みんなで考えようよと。
日々作業しながら「あの人のあの作業、大変そうだった」という話を聞いたら、それをいろんな人と共有して「どんな工夫をしたら楽になりますかね」って話をして、社長に決済を取ったり。布を畳むという1つの作業でも、せっかく畳むなら1番早く綺麗に畳むとか、そういう楽しみを見つけるのも好きなんです。
渡部さんの理想の日本酒とは
どんなものでしょうか。
新澤醸造店では「究極の食中酒」を掲げていまして、スイスイ飲みやすくて、皆さんが食べ物を食べる時のそばに置いてもらえるようなお酒が1番理想かなと思います。マリアージュのような新しい味を創るのとは多分ちょっと違うんですけれども、どのお料理でも「とりあえず弊社のお酒さえあれば美味しく飲めるよね、置いておけば安心だよね」と言ってもらえるようなお酒です。
みんながすごく美味しいと言って、でも減っていないお酒よりも、みんなが何もコメントをしていなくても「飲み会の終わりには一升瓶が空いてしまうようなお酒」。そんなお酒を造りたいというのが社長の元々の考えだったので、私もそれはすごく素敵だなと思っています。