黒糖と米麹の絶妙な調和が作り出す独特な甘みと香り
奄美諸島にだけ黒糖による焼酎造りが許されているのは、戦後の8年間この地域が米軍施政下にあったことと密接な関係がある。その間に黒糖を原料にした焼酎が盛んに飲まれるようになったからだ。日本に復帰後そのままではラム酒(スピリッツ)として焼酎の数倍の酒税が課せられるところを、他の焼酎と同じように米麹を使うことを条件に奄美諸島のみ、黒糖を使った焼酎造りが認められたのである。原料構成比は米麹1対黒糖2といった配分が一般的である。
米麹を使うことで、黒糖由来のトロピカルな独特の甘みや香りと麹からくる和風の香りが微妙に調和して絶妙な味わいを漂わせる名酒に仕上がるようになった。
現在では奄美5島(奄美大島・喜界島・沖永良部島・徳之島・与論島)の25社で黒糖焼酎が年間5000kl前後造られていて、約1/3が島外に出荷されている。
ちなみにかつてはほとんどが奄美諸島産の黒糖を原料にしていたが、政策変化により国内の精糖業が衰退すると共に砂糖農家も減少し、現在では沖縄から購入されるものが多くなっているようである。黒糖焼酎は誕生以来様々な政治の流れに振り回されてきたが、最近ではその独特の香りとソフトな甘みで、一度飲んでみたいという本土の消費者も増えてきている。
酒文化研究所 狩野卓也(日刊ゲンダイ 9/24掲載)
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