焼酎の味や香りの世界をどんどん広げる技術変革
昔に比べて焼酎の味わいもすっきりと軽くなったとよく言われる。この傾向は本格焼酎だけではなく、日本酒・ビール・清涼飲料など飲料全般に通じることでもある。
焼酎の味わいが淡麗になってきた背景には、技術的な変革もある。昭和40年代半ばから実用化されはじめた減圧蒸留法の普及によるものだ。単純にいえば蒸留器の中の空気を抜いて気圧を下げて、低い温度でモロミを蒸留するのである。気圧の低い富士山の頂上では水が80度台で沸騰するのと同じ原理だ。蒸留時の温度が低いために、揮発する成分が少なくすっきりとして、やさしい風味の焼酎ができる。
現在では主に、麦焼酎、米焼酎でこの減圧蒸留が行われている。では、昔ながらの常圧蒸留がなくなったのかと言えばそんなことはない。いも焼酎は、今でもほとんどが常圧蒸留のままである。米や麦の場合でも常圧蒸留で造った焼酎は、濃醇で香味も個性的なために好みが分かれるが、熟成すると酒質が大きく向上するので、長期熟成酒を造るのには適している。また、最近では同じ原料で減圧ものと常圧ものとをブレンドして味や香りのバランスをとった商品も発売されている。ふたつの蒸留法による酒質の特徴を生かして味や香りの世界を広げているのだ。
酒文化研究所 狩野卓也(日刊ゲンダイ7/18掲載分)
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