日本列島に湯気が立っているような暑さの中、学生たちに誘われてビアガーデンに行った。眼前に桜島を望む絶好の席に陣取り、まずはビールで乾杯。二杯目は桜島に乾杯。
いきなり桜島が返礼の爆発で応えたのには驚いた。夜風に吹かれ、むくむくと湧きあがり、夕日を受けて茜色に染まる噴煙を眺めながらのビールがまずかろう筈がない。酒の肴につまみはいらぬ、火を吐く山があればいい。
喉の渇きを潤した後は焼酎に切りかえる。一息ついたところで、満席の酒客の観察を始めた。サツマオゴジョが豪快にジョッキを傾けている。男女半々くらいか。
ビールを二杯ほど飲み、そのあとは焼酎に切り替える人が多いようである。お湯割りと水割りでは、水割りがいささか多いように見受けられた。
これだけ暑いとさもありなんと思うが、こちらは真冬も真夏もお湯割り一辺倒である。
親の小言と冷酒はあとで効く。冷酒はだますのが旨い。冷たさをおいしさと錯覚させる。アルコールを感じさせないおいしさでしょうと、つぶやきかける。
そこへいくとお湯割りはいい。連日、酒に浸っておれるのもお湯割りあればこそである。お湯割りは素直である。酒の個性をあらわにしてくれる。
お湯割り焼酎の最終の味は飲み手が作る。私だけの手づくり焼酎である。酔っ払っても、言い訳けができない。お湯割りは、酔っ払ったら自己責任だよと突っぱねてくれるから。
焼酎の季語は夏、お湯割りも夏と俳人から聞いたことがあるが、お湯割りは暑い夏を乗り切る知恵だったのである。
体を冷やさず、暑さを吹き飛ばす暑気払いの酒であり、うっとおしい梅雨に発汗を促す健康的な飲み方である。
最近、酒を一滴も飲めないカミサンがお湯割りにはまっている。焼酎ではなく、ミネラルウオーターのお湯割である。これならいくらでも水分をとれて体調がすこぶるいいという。
お湯割りは焼酎を飲むのではなく、お湯を飲むために焼酎を入れて飲み易くしているのだと、酒飲みの詭弁を弄しながら夫婦の会話が弾む。
夫婦円満、夏ならではのお湯割りの醍醐味のひとつである。
それにしても、ビアガーデンで飲む焼酎は格別だった。
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