今年は台風がこないなと思っていたら、事故米混入という大型竜巻が焼酎業界を襲った。突然現れピンポイントで破壊し、飛び散った瓦礫が全国に散らばった。自然災害なら諦めもつこうがこの竜巻は悪意に満ちた人為的なもので、風評被害が甚大な上に瓦礫の回収の責任まで負わされるとあって被害者には何とも同情を禁じ得ない。
今回の事件で焼酎メーカーにとって意外と思える声が消費者から聞かれた。芋焼酎なの になぜ米を使っているのかという不信感を伴った驚きである。なかには、最近の芋焼酎は昔と違って飲みやすくなってどうしてなのかと思っていたが、米を混ぜていたからなのか、というとんでもない誤解もあった。まだまだ、本格焼酎のことは良く知られていないと愕然とさせられた。 芋焼酎のボトルを見ると原材料として「さつまいも、米麹」と書かれているが、芋焼酎と米麹のセットは江戸中期の芋焼酎誕生のときからずっと今日まで続いてきているもので、米麹がないと芋焼酎は生まれなかったと言っても過言ではない。
米麹の役割は3つある。ひとつは清酒の米麹と同じで、米麹の糖化酵素でさつまいもや米の澱粉を糖分に変える働きである。酵母は澱粉を直接アルコールに変えることが出来ないので、麹が澱粉をその酵素で細かく切って小さな糖分に変え、酵母に食べさせる役割をしている。二つ目は清酒麹と異なり、焼酎麹がクエン酸を作りだすことである。このクエン酸によって温暖な南九州の焼酎つくりは雑菌汚染から守られ、クエン酸に強い焼酎酵母との相乗効果によって安全にアルコール発酵が行われ、そして最終の蒸留工程で蒸発しないクエン酸は切り離されて、良質の芋焼酎ができあがる。三つ目が芋焼酎らしい香りと柔らかな甘さを引き出す効果である。ちなみに米はさつまいも重量の5分の1程度使われ、全量が麹になる。
さつまいもと米麹は切っても切れないおしどり夫婦の関係にあるのです。 |