酒の呼称はいくつかに分類できる。「清酒」や中国の「黄酒」「白酒」は見た目から、「ブランデー(蒸留酒を意味するブラントヴァインが転化)」は製法から、「麦酒」、「ぶどう酒」は原料由来で、「ウイスキー(命の水を意味するウシュク・ベーハーが語源)」や「スピリッツ」は薬効のイメージ、酔いの状態からきたのが「ラム(泥酔させる主役を意味するラムバリオンが転化)」といった類である。
では「焼酎」はどこに分類されるのだろう。「焼」は熱を加えることを、「酎」は「味のある濃醇な酒」を意味する。つまり「焼酎」とは「味わいのある蒸留酒」という意味で、お湯割りでおいしさの引き立つ特徴をよく表した言葉で、製法と酒質特性を表したユニークな命名ということになる。
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449年前の焼酎最古の文字
(鹿児島県大口市郡山
八幡神社落書き) |
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だがこの味わい深い呼称も、ひらがな表記の「しょうちゅう」では実態が伝わらない。実は、酒の分類を規定している酒税法では、ずっと「しょうちゅう」のままである。今や、地酒の域を脱した焼酎に「しょうちゅう」はなかろう、と思っていたところに朗報が飛び込んできた。「焼酎」以外に使われることのない「酎」の字が、「社会生活でよく使われる漢字」として、行政機関の漢字使用の目安となる常用漢字の追加候補に挙がったのである。
思えば、本格焼酎の歴史は、その地位向上のための歴史でもあった。「乙類」に代えて「本格」と呼ぶことを認めさせ、さらに乙類焼酎の中で添加物が一切ないなど「本格」の名にふさわしいものを「本格焼酎」と呼ぶ規約を制定し、そして平成18年には「しょうちゅう」に甲類、乙類があるとする酒税法が改正され、「単式蒸留しょうちゅう」として独立する悲願を達成した。そして今、本格焼酎は新しい衣をまとった「焼酎」として名実ともに認知されようとしている。 |