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本格焼酎と泡盛
コラム「本格焼酎&泡盛・産地巡り」
   
第21回 豪雪地帯、本格焼酎を育む
 真夜中の東京駅。東京の真ん中と言えど、ひっそりと静かです。ここから高速夜行バスに乗っておつまみと、最近東京のコンビニでも見かけるようになった本格焼酎ワンカップを片手にうとうとと9時間、福井県福井市までのバスの旅となりました。
 
猛々しい北陸の海と海岸線
猛々しい北陸の海と海岸線
 朝の福井駅、人通りは少なく、体の芯から冷えるような寒さを感じながら、ここからまたバスに乗ります。中心地から外れてしばらく経つと緑が多くなり、刈り取りの終わった田園風景と山並みを眺めることが出来ます。急に視界が開け、目の前に日本海特有の濃い青の海が広がります。蔵元さんが、「緑に覆われた崖がほぼ90度で海に突き込んでいる。この猛々しさが北陸の海の特徴だよ。そのため波が荒く、冷たい荒波にもまれた海の幸は身が引き締まって美味しい。真冬になると急激な気温の低下と海の荒さが原因で雪の華といって海岸線に細かい泡のようなものが舞うんだ」といってました。 
 冬には日本へ冷たく乾燥した北西の季節風が吹きます。その風が日本海を渡る間に海面の水蒸気と熱で雪雲へと発達し、それが中央山脈にぶつかり雪を降らせるのです。したがって日本海側、特に北陸地方は世界でも有数の豪雪地帯となっているのです。冬の北陸は大雪で周囲の音も聞こえないような静けさを保ち、そこでひっそりと日本酒が仕込まれてきました。その中で本格焼酎を製造している蔵元さんは福井県に1場、富山に2、石川3、新潟には10場あります。雪が育んだ綺麗な日本酒から出来た極上の酒粕で造る粕取り焼酎。美味しくないわけがありません。 
 「蟹漁の解禁前だから冷凍だけど」と渡された蟹はかの有名な越前蟹(山陰では松葉蟹と呼ばれます)。ひっくり返すとルビー色の外子(そとこ)が光ります。「メスの越前蟹は福井ではせいこ蟹、石川では香箱(こうばこ)蟹って呼ばれています。食べ方は色々あるけど、うちはこれに限る!」と蟹の身、内子(うちこ)、外子を全て取り出し、あつあつの御飯にのせられました。そこに少しの醤油をかけ、かに御飯の出来上がりです。お箸で蟹と御飯を混ぜ一口。蟹のそれぞれの部分の触感と濃厚な旨味が御飯と合わさります。そこに粕取り焼酎をロックで。蟹の旨味を心地よく膨らませてくれました。
 
 海の幸、山の幸、そして銘酒のふるさと北陸地方。海の幸は日本酒が合う印象がありますが、その酒粕で造られた焼酎で楽しむのも素晴らしく、新鮮でした。試してみてはいかがですか?

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