製法の異なる酒を共に焼酎と呼ぶ不思議
世界各国にあるオリジナルの蒸留酒のひとつとして焼酎を考えると、日本固有の特徴がふたつ浮かび上がってくる。ひとつめは、明治以降に導入された連続蒸留式の無味無臭な甲類焼酎と単式蒸留による伝統的な本格焼酎を一緒にして「焼酎」と呼んでいることです。
戦国時代以来、蒸留酒のことを焼酒、焼酎と呼んでいたので、明治時代に連続蒸留機が導入され、新式焼酎が登場したときに、伝統的な酒も一緒に「焼酎」としてしまったのでしょう。ヨーロッパでは、蒸留酒という意味での、スピリッツ、オードヴィといった言葉と、ブランデーやウイスキー、ジン、ウォッカといった製法・原料による呼び名の両方が確立しています。同じブドウ原料の蒸留酒でも、粕取の場合には、マールやグラッパというように別の名前が使われています。
お隣の韓国も「焼酎」を造っていますが、主流は日本で言う甲類焼酎タイプであり、真露など連続蒸留方式の焼酎を「希釈式焼酎」と呼んでいます。高濃度のアルコールを加水調整して飲みやすい度数にして、少し甘味を加えている製造方法に即した名前です。それに対して最近ようやく復活し始めた伝統的な単式蒸留のものは「蒸留式焼酎」と呼ばれているようです。この区分の方が実態をわかりやすく伝える名前に感じませんか。
酒文化研究所 狩野卓也(日刊ゲンダイ 7/22掲載)
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