胃にはふつう心臓から出る血液の4%くらいの血液が流れています。適量のお酒を飲むとその血液の量がグンと増えて、心臓の働きがリズミカルになり、全身の血行が良くなります。その結果、胃液の分泌が盛んになり、食欲も増し、消化機能も高まるというわけです。また、嬉しいことに、日本酒程度の度数(15%程度)のアルコールが胃に入ると、ラジカルというバイ菌を殺す働きが強くなります。これは殺菌作用のあるワサビやショウガなどの香辛料を取ったのと同じ効果があります。食欲が湧いた後で、食べながら飲むということも、胃液の分泌を盛んにするとともに、胃の中のアルコール濃度(10%以内がベスト)を薄めるという点で重要です。また同じ量のお酒でも、グイッと飲むのと時間をかけて飲むのとでは、胃への影響はまったく違います。ゆっくり飲めば、アルコール濃度を常に良い状態に保つことができます。食べ方にも気を使えば、お酒はいっそうおいしくなります。

回答者:佐藤信紘さん
1940年、大阪府出身 医学博士
順天堂大学医学部教授
日本内科学会・日本消化器病学会・日本アルコール薬物医学会に所属