春を実感する食べ物の代表に筍があります。竹冠に「旬」とはよくぞ書いたものです。
叔父の家の裏庭には立派な竹林があって、この季節になると毎年出かけていっしょに筍掘りをするのが恒例となっていました。叔父は筍掘りの名人で、まだ顔を出していない筍を次々に掘り出していきます。掘り出したばかりの筍は、灰汁抜きをする必要がありません。その場で食べきれなかった分は、家に持ち帰ってさっと茹で、筍ご飯にしたり、油で炒めたり、春の楽しい食卓に欠かせないものとなっていました。その叔父も4年前に亡くなりましたが、最後に聞いた言葉は「桜の花が散って葉桜になるかなあという時になったら、うちに来い。筍食わしてやる」でした。
筍も水煮されたものはパックされて、一年中売場に並んでいます。中華料理屋にいけばどこの店でもいつでも食べられます。でも、この時期の筍はひと味もふた味も違います。シャキシャキした歯ざわりは今だけのものです。皆さんも、ぜひ、旬の筍を召し上がってみてください。
おいしい筍を選ぶコツは、太くて短いもの、竹の皮の白いもの、竹の皮のうぶ毛がそろった大きいものだそうです。ポピュラーな若竹煮は茹でて1cm厚くらいに切り、ワカメといっしょに出汁と酒で煮ます。沸騰したら落とし蓋をして30分ほど弱火で煮て、醤油か塩で味を調えます。
これは日本酒が進みます。花見が終わった後は、筍を肴に葉桜見物がいいですねえ。今年はひとりで筍を掘ってみようかな。