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| 2002/9/19 発行 no.34 |
日本酒で季節を飲む
秋から冬にかけてだけ酒をつくる寒づくりは、日本酒に特有のことのようなイメージがあります。ですが、本来ワインはぶどうが収穫される秋にしかつくらないものですし、スコッチウイスキーの蒸溜所も夏場は稼動しないところが少なくありません。酒づくりの時期は、原料とする農産物の収穫期、気温が低く発酵を管理しやすい時期などで大方決まってきたのです。
けれども、できたお酒で季節を感じようとする文化は日本酒がもっとも豊かです。日本酒は、年を越すとすぐにできたてのフレッシュな「しぼりたて」が出ます。あらく搾った「にごり酒」も冬場のものです。秋になると「ひやおろし」が出てきます。つくったお酒を一年以内に飲みきってしまう文化が、こうした季節の酒を育んできました。
「ひやおろし」を楽しめる時期が近づいてきました。お彼岸を過ぎると、続々と出てきます。普通、日本酒は加熱殺菌されてから夏を越し、出荷前にもう一度加熱されて、品質を安定させて市場に出されます。つまり、市場に出るまでに2回の加熱殺菌の工程があるのです。「ひやおろし」は出荷前の加熱をせずに、夏を越えたそのままの姿で、お酒が気温と同じくらいになった頃に出荷されるこの時期だけのお酒です。
日本酒ではよく「秋あがり」と言います。お酒が夏のあいだに熟成し、うまみが増しておいしくなることを指します。これをそっくりそのまま楽しんでしまうのが「ひやおろし」です。
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今年はぜひ、このお酒をじっくりと味わってみてください。
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Illustration/福田トシオ
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