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桜の開花に一喜一憂するこの季節、南から花を追いかけて旅する風流人も多いことでしょう。その土地の旨い酒に舌鼓を打ち、花を愛でる…春風にたゆたう花びらが盃に浮かべば、まさにこの世の極楽です。
今回は、薩摩国(現・鹿児島県と宮崎県南部)の花見風景を『薩摩見聞記』(本富安四郎著)に読んでみましょう。「旧暦三月上旬には花見と称え、一般に野遊を為す…多勢打寄り酒肴の用意をなし…酒もりを為す…太鼓、三味線等持ち行き終日愉快に騒ぐなり」。
“花見と称(とな)え”という表現から、花見は“名目”と分かる薩摩人のほほえましさ…野外で心置きなく芋焼酎を飲みたいだけなのです。
明治初年の薩摩では、「好酒家は家族一年間に食すべき米と同じ石高を之(焼酎造り)に用」いており、「五合位は誰にても飲」んでいたのですから、大変な焼酎王国です。
自分の家で造った芋焼酎と肴を持ち寄るだけの手軽さで、親睦会と聞けば数千人集まることもあったという薩摩の花見…野も山も花も、芋焼酎の匂いでむせ返るような賑わいは、南国薩摩の明るい底力を感じさせる逸話です。
春爛漫、お好みの本格焼酎&泡盛を片手に出かけましょう。
薩摩人を見習って大花見会を催すのも、一興ですね。 | |
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