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本格焼酎と泡盛
春秋謳歌 -南からの焼酎便り-
   
- 第25回 -
第25回 暖かい酒を
 本格焼酎と清酒は、ともに麹を用いる酒であり、杜氏制度を持つ季節産業であり、食中酒として生活に欠かせない日本を代表する酒といった共通点を持つ。だが、この両者には決定的な違いがいくつかある。焼酎は蒸留酒で清酒は醸造酒。鹿児島の焼酎は暑い時期に始まるのに対して清酒は寒造りと呼ばれる極寒の季節に造られる。主原料も異なり、麹や酵母といった酒つくりの微生物の性質も異なる。この違いを実体験しようと、鹿児島の焼酎製造業者と焼酎学講座からなる東北研修旅行を実施したことがある。

南部杜氏の造る酒(南部杜氏伝承館)
南部杜氏の造る酒(南部杜氏伝承館)
 12月の東北の寒さは南国育ちには厳しいものだったが、清酒蔵の寒さはひとしお身に染みた。はじめて清酒蔵に足を踏み入れた焼酎蔵の面々は造りの環境の違いに驚かされた。
 腐造防止のために清酒が取り入れた手法は、冬の寒さを利用し低温で発酵させる技術であった。低温下で乳酸菌などの自然の微生物を巧みに操る生もとという技法を編み出し、そして低温で発酵力が強く香気生成能の高い酵母が選抜されてきた。低温であればこそあの香味が生まれる。米の性質を巧みに利用し、米を磨くことでその香味をさらに高める技術も生まれた。一方、本格焼酎はクエン酸を作る麹菌と蒸留を組み合わせて、二次仕込法と呼ばれる南国の暑さに負けない安全醸造の手法を開発し、醸造酒のように飲める不思議な蒸留酒を作り出した。

  酒つくりはその生まれた気候風土の生み出すものであることをあらためて実感させられた。清酒の熱燗の醍醐味は寒い土地ならではのものがある。夏の暑気払いのお湯割りは南国でないと味わえない。風土が酒つくりの技法を編み出し、気候が味わいと飲み方を生み出している。その清酒の似合う地域が自然の猛威の前に大打撃を受け、風評被害に苦しんでいる。一日も早く、暖かい燗酒をゆっくり楽しめる日のくることを祈りたい。寒い地域の寒い環境の中から生まれる暖かい酒を飲んでもらいたいものである。
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