連日の照りつける日差しを緑の葉っぱで涼しげに受け止めているサツマイモ畑を見ていると、猛暑にうんざりしている人間世界が小さなものに見えてくる。豪雨や台風に見舞われながら、何事もなかったかのごとくどっしりと構えているその姿が何とも頼もしい。
7月末日、うだるような暑さの中、鹿児島大学農学部で焼酎学研究棟の開所式が盛大に行われた。県民の熱い期待を乗せての船出式である。大学には珍しく焼酎蔵を思わせる和風の建物である。鹿児島大学の歌といえば、その前身である第七高等学校の記念祭の歌である「北辰斜め」が良く知られている。北辰とは北極星のこと。この歌にちなんで、また、この研究棟を中心に焼酎学が回ることを願って、「北辰蔵」と名付けられた。
ところで焼酎の研究ってどんなことをやるんですか、と良く聞かれる。答えとして引き合いにだすのは、焼酎学らしきものを最初に提唱した幕末の薩摩の名君、島津斉彬公である。薩摩の武士が芋侍と蔑称されていた時代、斉彬公は「甘藷(さつまいも)は当国(薩摩)の名物なれども他邦に産物とするに至らず。之を変化し酒とし、或いは医薬とし、あるいは軍備の諸事に持ちうる時は、
産物の大いなるものとなるべし」と、地域資源としてのサツマイモの可能性を指摘し、さらに「甘藷酒(芋焼酎)の製醸は経済の要となれり。よってその醸法を研究し、なお良法を発明し、臭気なく飲用よろしき様に」と、芋焼酎の研究を推進するよう指示している。
焼酎学講座は地域資源の活用に努め、地域伝統産業に愛着と夢を持つ次代を担う人材の育成と、焼酎の国際的ブランド化の確立を通じて斉彬公の夢の実現を図りたいと思っている。 |