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午後8時、広島港から高速船に乗り込みます。窓から見えるものといえば黒色の水面を船が時折照らし出す光だけ。約2時間、船の進む先にネオンが照らされ始め、松山港が見えてきます。
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光に照らされタンクの中でゆるやかに発酵するもろみ。 |
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港で『松山あげ』という乾燥したお揚げさんを見つけ購入。後日このお揚げさんでお味噌汁を作ってみたのですが、繊細な舌触りと優しい風味。揚げの貴婦人という印象です。本格焼酎&泡盛を飲んだ後に、たまらない一品なのでした。
翌日、ローカル線に乗り込み、きらきら光る群青の海を眺めながら目的の駅へ。そこから車で5分、蔵元さんに到着しました。
「日本人の食卓は大きく変わりました。日本人の元々の体質を考えると適応できない部分もあるでしょうが、飛躍的に脂物、乳製品の使用が多くなった。そうなると必然的にお酒の好みも変わってきます。こってりしたものには旨味の強い日本酒よりやはり本格焼酎が良く合うのです。食の変化と共に、本格焼酎の全国的支持が高くなってきましたが、そうなることで問題が出てきたのです。九州の蔵元さんと違って四国、中国以北では廃液処理の設備を持てるほど焼酎を生産していない。今までなら製造の時に出来る焼酎廃液は少量でしたので肥料にしたり、海に投入する事も可能でしたが、最近は廃液処理が追いつかない。製造量的にも昔の循環型農業(廃液→肥料→土地)は出来なくなってきたのです」と蔵元さん。
まだまだ改善、研究しなければならない四国地方(中国地方や本州)の本格焼酎造り。最近海外の地でも本格焼酎に対する研究がなされているようです。
「ベトナムで貯蔵甕の研究が行われています。金属の多く含まれている土で作った甕、普通の焼き物用の土での甕、そして金属が中の液体に浸透しない甕、3種の甕を用意し、どれが一番熟成が旨く進むかというものです。金属(鉄やマンガン)が熟成を促すという、ある先生の説です。貯蔵用の大きな甕を日本で作れる蔵もほとんどない上、大変高くつきますし、最近使われている中国製の甕は基本的に薬品用なので甕の成分が浸透しないように作られている。だから甕製造も考え、ベトナムで研究がされているのです。と、言いながらも私は熟成に関しては年代に勝る技術は無いと思っています。5年から10年貯蔵すれば必ず美味しくなるものなのです」。
十人十色、様々な考えがあります。蔵元さんの「自分の蔵の味を大切にしていけば良い。色んな味があっていい」という言葉に一(いち)焼酎ファンとしてうなずくのです。 |
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