|
|
東京から新幹線で約2時間、名古屋に着きました。名古屋名物天ぷらのおむすび、天むすを買い、また電車に乗り込みます。温かい御飯の中でしっとり柔らかな衣に包まれた海老天はほのかに甘く、優しい味がします。海老天を食べ終わったと思ったらまた1つ、御飯の中からひょっこり出てきました。得した気分です。
電車を乗り継ぎ、車窓から見える景色に緑が多くなってきます。がらんとした無人駅に降り立ち、岐阜県でみりん、清酒、本格焼酎を製造している蔵元さんを訪れました。「みりんの製造は本格焼酎にもち米と米麹を加え醪(もろみ)をつくり、100日間かけて醪を糖化させてから搾り、またそれを貯蔵します。ですから私達、みりんの製造者にとって本格焼酎、というと『みりんの原料』というイメージがありますね。しかし最近、お客さんの希望もあり本格焼酎の製品化をしています。まあもともと製造はしてきましたからね」と蔵元さん。現在この蔵では米焼酎をみりんに使っているのですが、江戸時代の創業当時は粕取焼酎でみりんが造られていたそうです。「酒粕から主に3つの製品が造られます。漬物(粕漬け)、酢(粕酢)、そしてみりん。そんな訳で、みりん蔵は本格焼酎も造っているところが多いのです。うちでも江戸時代の文献を元に、また粕取焼酎を造り始めました」と蔵の外に出ると木製の甑(こしき)が2つ見えます。高さも130p程の小さなものです。「江戸時代からある甑ですがまだ現役。新しいものに替えるだけじゃなく、昔の落し物は拾い上げてあげなくちゃ。製造技術だってそうです」。
出来上がった粕取り焼酎はうっすらと濁っており、表面にはほんの少しですが油が浮いています。一口頂き、衝撃が走りました。良く言えば個性が強い。悪く言えば粗く、藁のような、独特の匂いが口に広がります。文献により籾殻(もみがら)を通常の酒粕焼酎より多く入れているそうです。江戸時代の人々はこのような焼酎を飲んでいたのでしょうか。自分の感性を揺るがすような、そんな焼酎でした。
現在本格焼酎を製造する蔵元は岐阜に10場、愛知に8、三重5、静岡に10場あります。いずれも本格焼酎を専門とする蔵ではないのですが、清酒やみりんの製造技術を活かした、味も香りも幅の広い個性的な本格焼酎といえます。今回利いた粕取焼酎への驚きは忘れる事は無いでしょう。そんな驚きを本格焼酎蔵でない他の専門蔵元で探すことが出来るのです。楽しみがまたひとつ、増えました。 |
|
|