先人たちの知恵に思いをはせる 酒粕焼酎は肥料の副産物
本格焼酎の製造数量は、麦・いも・米・そばと数量の多い主要4原料と酒粕、その他という形で発表されている。というのも、今でこそ酒粕から造る本格焼酎はごくわずかですが、戦前までは、農村を中心にかなりの量が造られていたからです。
伝統的な酒粕焼酎(粕取焼酎)は、発酵させた酒粕を籾穀とまぜて、そこに含まれるアルコールを蒸籠で蒸して蒸留しました。焼酎を取ることと共に、酒粕からアルコール分を除去して、良質な肥料を作ることも目的だったそうです。
この製法の酒粕焼酎は独特の強い香味を持ち、若い人にはあまり受け入れられず、造っている蔵もごくわずかです。現在の酒粕焼酎の主流は、他の焼酎と同様にもろみの原料として酒粕を使い、吟醸酒のような香りがするものです。
先日、この伝統製法で酒粕焼酎を蒸留するというので、福岡県の酒蔵まで見に行ってきました。骨董屋で見つけた古い蒸留器を使い、1ヶ月半ほど発酵させたクリーム状の酒粕と籾穀を合わせて木製の蒸籠で蒸すこと10数分、出来立ての酒粕焼酎が奔りました。
米から日本酒を造り、その酒粕で焼酎を造り、最後の粕は肥料となりまた田圃に戻る。完全な食品リサイクルになっていて古の人の英知に感激しきりでありました。
酒文化研究所 狩野卓也(日刊ゲンダイ 3/25掲載)
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