濃醇な味わいの秘密は独特の「全麹仕込み」にあり
泡盛の製法上の大きな特徴は、原料の米をすべて米麹にして、一度に仕込み発酵させる点にある。すべての米を麹にして仕込むことから全麹仕込みとも言われ、濃醇な味わいの酒になる。また沖縄の気候は年中温暖なので微生物管理が難しく、発酵中に雑菌が繁殖しやすかったのだが、泡盛用の黒麹は酸を多く出すことで見事に防いでくれる。
明治以前の泡盛は琉球王家の直接支配を受けていて、酒造場はすべて王宮のあった首里周辺にあった。当時は貴族の酒であったのだ。明治に入り制限が解かれて蔵元は沖縄全島に広がり、19世紀末には760社もの泡盛生産者が乱立したと言われる。しかし、その後に酒税増税・戦争被災などで廃業・解散となったところも多く、現在の泡盛メーカーは戦後に再発足したところが多い。
ところで、泡盛と言えば昔から古酒が有名である。名家では、何年分もの泡盛をかめで貯蔵し、賓客には一番古いものを供する。そして、飲んだ分だけ次ぎに古いかめから補充し、順次同じことを行い古酒を造っていたのだ。この方法をしつぎと呼び、かめをしまってある藏のカギは当主以外、誰にも渡さないと言われたほど大切なものであった。熟成という時間が産み出す酒の神秘を昔の人もよく知っていたのであろう。
酒文化研究所 狩野卓也(日刊ゲンダイ 8/22掲載)
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