日本酒スタイリスト 木村 克己
日本酒・目からウロコの話 9月号
「日本酒を涼しくする技術 その2.日本酒カクテル」
日本酒ほど多彩な楽しみ方ができるお酒も世界に類を見ないでしょう。常温で、冷やして、燗につけての他、ロックやお湯割り、水割りとあります。
それは、醸造酒としてはやや高いアルコール度数、とろみと繊細な甘さ、まあるい酸味、米からもたらされる柔らかで複雑な旨味成分などが織り成す不思議な味のまとまりがあるからです。
日本酒のこの特性を活かしたカクテルについてご提案したいと思います。
- サケイチゴー
薄手のカクテルグラスかシャンパングラスを用意し、あらかじめ冷凍しておいた真っ赤なイチゴを3~4ケ、カクテルピツク、そして香りの高い吟醸酒か、大吟醸酒を10℃前後に冷やして準備します。
グラスにイチゴ、その上からお酒を注いで、ピックを刺すだけの簡単さです。
イチゴはフレッシュな生よりも、冷凍のものが向いています。凍らせると融ける際にアルコールの強い浸透力によって、数秒後には、香りが抽出されてきます。吟醸酒にはフルーツ様の香りがあって、これらが合体し、イチゴの酸味と、質の違う日本酒の酸味が重なり合って非常に爽やかになります。
イチゴは氷の役も受け持つわけで、色目も香りも、味わいも本当に楽しい飲み物になります。「1合(180ml)」は飲めることうけあいです。
- サケサンショー
新鮮な香り高い木の芽(山椒の若い芽)1~2枚、塩漬けの実山椒(ビン入りで売っています)を用意します。実山椒は水にさらして沈んだ物を取り分けますが、この時塩出しも同時に行なわれます。本醸造酒を12℃前後に冷やし、グラスに1サジの山椒を入れお酒を注ぎ、最後に手のひらでポンとたたいた木の芽を浮かべて出来上がりです。これも日本酒の持つアルコールで香りが抽出され、山椒の塩味はお酒の酸でマイルドな塩梅となり、ピリット感は旨味ととろみでやさしくなりながら、お酒の旨味がぐっと引き立ちます。
山椒はそのまま、つまみになります。爽快さの中にホットさもあってお酒が「3升」は飲めるかもしれません。(飲みすぎに注意)
- サクラサケーッ!
クリーンなカクテルグラスか小さなタンブラーを用意します。桜の葉(10枚入りパックがあります)、桜の花(ビン入り)の塩漬けは、製菓材料として売られています。これらを靜かに水にさらします。 桜の葉は根元の硬い部分をハサミで切っておきます。グラスに桜の葉を1枚立てて入れ、花を3~4ケ入れます。花はしわしわにしぼんで、何かよくわかりません。
ここに冷やした軽快な生酒か生貯蔵酒を注いでゆきますと、アラアラ、グラスの中で桜の花がふんわりと咲いて満開となります。桜の葉の香り、花の香り、それぞれ微妙に異なるとても心地良い香りが、かなり広い範囲に拡がってゆきます。この時「桜よ咲け!」というつもりで仕事をすすめる愛情が必要です。パーティーや様々なお祝い事に向く、日本酒ならではの、めでたいカクテルだと言えるでしょう。
※上記カクテルは、1998年創案の木村克己オリジナルです
一覧へ戻る
[an error occurred while processing this directive]
[an error occurred while processing this directive]