<日本酒の日について>
日本では12種の動物にたとえられている十二支は、古代中国の天文学・暦学から生まれたもので、本来は1年の月の記号です。その10番目に当たる「酉」は、わが国ではトリと読まれていますが、元来壷の形を表す象形文字で、酒を意味しています。
古代では1年の始まりを冬至においていましたので、10番目の酉の月は今の9月末から10月のころとなり、新米が収穫されて新酒が醸される月であったことを表しています。つまり、10月は古来酒の月でした。こうした歴史を受けて、酒造家の中では、10月1日を「酒造元旦」として祝う風習が残っているところもあります。
通常日本酒づくりは、晩秋から厳冬、早春にかけて仕込みが行われ、並行複発酵(糖化とアルコール発酵が同時に進行する発酵技術で、世界の発酵法の中でもっとも高度な技術といわれている)という日本酒固有の醸造法によって、新酒が誕生します。さらに新酒を火入れ(低温殺菌)して貯蔵タンクに囲い、涼しい酒蔵の中で夏を越させます。酒蔵で静かに息づいている酒は、ゆっくりと熟成して秋口には、香り、味とともに芳醇な酒となります。
このように日本酒は、冬から春、夏から秋へと日本の四季の移ろいとともに生まれ育つ酒で、日本独特の気候風土が生み出した酒です。豊かな自然の恵みと日本人の知恵の結晶が日本酒であると言えます。わけても、10月は全国各地に海の幸、山の幸があふれ、日本酒が本当においしくなる月です。
日本の文化遺産ともいえるこの日本酒を正しく引き継ぎ、後世に伝えるという想いを新たにするとともに、一層の愛情とご理解を、という願いをこめて、日本酒業界では、1978年(昭和53年)に「10月1日は日本酒の日」と定めました。
<鏡開きについて>
新年の1月11日に、供えた鏡餅を食べる習慣「鏡開き」が正月の行事として行われています。酒屋では酒樽の蓋を「鏡」と呼んでいます。神事で酒樽の蓋を(鏡)を開く鏡開きは、健康・幸福などを祈念してその成就を願うものです。
また、「鏡」は円満を、「開く」は末広がりを意味するといわれています。
結婚式や祝賀パーティーなどのセレモニーで、鏡開きが行われることが多くなりました。めでたい席で「鏡割り」では縁起も悪いので、「鏡開き」というのがよいとされています。
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